アユ
中学一年のときにアユサワ君という同級生がいました。背が小さく小太りで、目の大きい子でした。愛嬌のある顔に似合わず、どこか老けた雰囲気があり、ズボンやYシャツをだらしなくダボダボさせていました。
勉強はできない口で、集中力がなく悪ふざけばかりしていました。小柄の割りに声が太くて大きく、喋ると迫力がありました。ひとことで言えば、散らかった感じの子でした。
アユサワ君は暴力団の組長の息子でした。だから散らかった感じが、いかにもという印象でした。しかし彼はけっして高圧的だったり暴力的だったりした訳ではありません。無邪気で愛想が良く、よく喋り、よく笑いました。先生にはよく叱られたけど、クラスのみんなには、アユ、アユ、と呼ばれ親しまれていました。
アユはたまに学校の外で会うとタバコを吸っていました。いつか数人の友達と話をしていてピストルの話題になったとき、居合わせたアユが「撃ったことあるけど手がチョーしびれたっけ」と言っていつもの調子でヘラヘラ笑いました。私たちもちょっと笑いました。