家族に連れられて百貨店のおもちゃ売り場に来ました。父も母も、祖父母もいました。誕生日だか、クリスマスだかは忘れましたが、その日は特別におもちゃを買ってくれることになっていました。どれでも好きなものを買ってもらえると言われて、私はみんなを従えて勇み足で売り場を巡りました。

 あるひとつのおもちゃが私の目に留まりました。それは棚の一番上にあって、大きな箱に入っていました。私はおかっぱの頭を上げて、これ、と指をさしました。その途端、母と祖母がすっとんきょうな声をあげました。
 「えぇー?」
 「こんなものを!」
 その趣味を二人して大げさに見下す反応に、私は水を浴びせられたようでした。その瞬間、私はかっとなってその場を飛び出しました。その後の記憶はありません。

 後年、母が笑い種として誰かに話していたのを聞くと、あの時は私が突然失踪したので、家族は慌てて百貨店の中を探し回ったようです。なかなか見つからなかったようですが、ようやく発見されたとき、私はトレイに立て籠もっていたのだとか。

 あの日、私が発見されたあと、例のおもちゃを買ってもらったのでしょうか。それは私の記憶にも、母の話にもありませんでした。ぶそくった顔で大きな箱を抱えて帰った記憶が、あるような、ないような……

 「覚えてる?」
 母が昔の笑い話をしてから私に向かって聞きました。私は首をひねって、曖昧な顔をします。あの恥ずかしい思い出は、親の前ではすっかり忘れたことにしているのです。