その日も近所に住む仲の良いユウキ君と遊びに出かけました。そのころちょうど、親の持っていたコンパクトカメラで家の中を撮影することに興じていました。私は外の広い世界にもファインダーを向けてみたいと思い、カメラを借りて家を出ました。

 私とユウキ君は、かつて通っていた幼稚園の裏手を通りました。冬のことで、そこにはフェンスに囲まれたプールが凍っていました。
 私たちはその大きな氷の面に魅入られました。二人はフェンスをよじ登り、プールサイドへ侵入します。そうして凍ったプールを物珍しく突っついてまわりました。
 ところが夢中になって氷へ手を伸ばしていると、無防備に携えていたカメラがするするっと滑り落ちて、身体から離れました。カメラは薄い氷を割って、その下の青く冷たい水に潜りました。
 私はとっさにそれを拾い上げたので沈潜はまぬがれたものの、引き上げたカメラからは、あとからあとからプールの水が滴り落ちていました。
 私は子供心に大変なことをしてしまったと思って沈痛になりました。そのあまりの落ち込みにユウキ君も心配そうでした。私はとても遊ぶどころではなくなってしまいました。

 ユウキ君と別れて家に帰りました。親にカメラを落として濡れてしまったことを話しました。話しながら、居たたまれなくなって涙がぽろぽろとこぼれました。
 親は案外平気な顔をして笑っていましたが、私は虫の居所が悪くて、目に涙をためながら黙りこくっていました。
 そこへ、心配したユウキ君が訪ねてきました。沈み込んでいる私に、母が「ユウキ君来てくれたよ」と言いました。私は情けない気持ちに胸がふさがれて気乗りがしなかったけれど、ユウキ君が待っている玄関に向かいました。