北国のまだ雪深い季節だった。
幾日も降り続いた雪が止んで、からりと晴れ上がった日である。
普段は陰気な座敷が法要客でごった返している。
訪れる足と迎え入れる足とが古畳をミシミシと踏み鳴らした。
女学生の姉妹が、今日はじめて会う遠戚の男に茶を持ってきた。
男は混雑を離れ、雪見障子から珍しげに外を覗いていた。
「駒子です。」
「葉子です。」
母親の言いつけどおり、姉妹は肩を並べて男に自己紹介をした。
名を知らぬはずの男がそれを聞けば即座に、
「島村さんですか。」
冗談まじりに言った。
「「はい。」」
美しいハーモニーで姉妹の声が合った。
男のほうが少し驚いた。
「家に本がたくさんあるでしょう。」
「「はい。」」
「いい親御さんですね。」
男はひとり合点している。
姉妹は困惑顔で返事をしなかった。
男は含みのある爽やかな微笑を投げかけて、
「ごきげんよう。」
茶碗をひっつまんだまま慇懃に姉妹の前を辞した。
「ごきげんよう……」
小さな声でかろうじて返したのは、どちらの娘だかわからない。
それは弱々しくも、悲しいほど美しい声だった。
古畳の上へ雪晴れのまぶしい光が硝子から差し込んでいる。
お勝手から母親が呼んでいる。