けいちゃんのおつかい
けいちゃんはお父さんにおつかいを頼まれてコンビニエンスストアへ向かった。小さな拳を握りしめて、その中には大切なお金が入っていた。コンビニにひとりで入るのははじめてだ。けいちゃんはいつになく身体がこわばっているのを感じた。
入口の前に立つと自動ドアがひらいた。けいちゃんは緊張をさとられないように、平気を装ってつかつかとレジに向かった。けれどレジには誰もいなかった。けいちゃんはどうしてよいかわからず、ただレジの前に立ってレジのなかをきょろきょろと見まわした。すると後ろのほうから「すいません」と言う男の人の声が飛んできた。それを合図のように棚の裏から店員が現れてレジに向かって来た。けいちゃんはほっとした。そうしてお父さんに頼まれたものを買って無事に店を出た。
振り返って店の中を見ると、もうレジに店員はいなかった。けいちゃんは、あの男の人の声が偶然だったのか、それとも自分に向かって発せられたのか、ふと気になった。もしも自分に何か用事があったのだとしたら、無視してしまったことになる。それに気が付いて急にバツが悪くなった。けれどもあの時は舞い上がっていて、冷静に考える余裕はなかったのだ。
もらったおつりを小さな拳にぎゅっと握りしめて、けいちゃんは家路を急いだ。