「おーい、僕のキャリーバッグはどこだい?」
「クローゼットの中よー」
「さがしてるけど見つからないんだ」
「私がきのう仕舞ったからあるはずだわ」
「なんで片付けちまうんだよ」
「汚れてるからひとに見られたくないの」
「あしたから出張だって言ったよね」
「ごめん、あしたは私が借りる予定なの」
「君には誕生日にやったカバンがあるだろ、ベラ?」
「リッキー、ムリよ。小さすぎるもの」
「あーなんてここは暗いんだろう」
「そうね」
「狭くてしょうがない」
「でしょう」
「首が凝るなぁ」
「ごもっとも」
「察しがわるいなー」
「手伝えって?」
「ほんと気が利かないんだから。だから……」
「だから出張って嘘ついて女と旅行に行くの?」
「なんだって?」
「リッキー、私ぜんぶ知ってるの」
「おいおいベラ、なにを言い出すんだい」
「あのカバンが“サリーちゃん”のおさがりだってこともね」
「察しがわるいくせに思い込みは激しいんだから」
「察しがわるいのはどっちかしら?」
「僕はいつだって客観的で冷静だよ、ベラ」
「あなたにキャリーバッグが見つかるわけないでしょ」
「どうしてさ」
「あんたキャリーバッグの中にいるんだから」