自分は老人になった。思い出のある懐かしい場所を訪れた。木造りのカウンターがあってたくさんの客が座っている。居酒屋のような場所だった。カウンターには昔と同じ女が今も立っていた。女は自分に気が付いた様子だが、こちらはそれに気付かぬふりをして壁際にある陳列棚へ近づいた。
 壁際には記念品を並べてある。そのうちの一つが昔の自分に関係するものだった。それは小ぶりな人型の銅像だった。銅像は背を向けている。その背中へ文字が彫ってある。自分は感慨に浸りながら銅像の背をしげしげと眺めた。
 カウンターに近づく。やはり女は、かつての懐かしい人物だった。そうしてふと客の居並ぶなかに見覚えのある男を見出した。すっかり年老いてはいるが、昔の面影を残している。その男とは銅像の由来となる出来事において密接に関わった間柄だ。自分は男を見つけると感極まってその場に泣き伏した。
 そこで枕辺の目覚ましが鳴った。
 目が覚めたとき、顔が泣き崩れた形のままのような気がした。
 目に涙が溜まっていた。